五人のコルクさん

ある秋の日の朝、五人のコルクさんは黄色に染まり始めた銀杏の木を見に行こうと
近くの坂道を上って行きました。
初めて上る坂道です。
「この坂の一番高いところからきれいな銀杏の木が見える」と、
今朝早く飛んできた楓の葉っぱが教えてくれたので、上ってみることにしたのです。
(その楓の葉はそれだけを教えてくれたあと、勢いよくどこかへ飛んで行ってしまいました。)
風が強い朝です。
五人は転がり落ちないように足元に気を配りながら、慎重に坂を上っていきました。
風が朝の雲を飛ばしていきます。
銀杏の木はまだ見えないかなぁと先頭のコルクさんがふと見上げると、
流れる雲の隙間から、レモン型の白っぽいお月さまが顔を出しました。
ーーこれから沈むお月さま、あの高いところにあるお月さまからは銀杏の木は見えるのかしらーー
先頭のコルクさんがそう思ったときぴゅうと強い風が吹いて、先頭のコルクさんは転がり落ちそうになりました。

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